連日、父のブリーフが盗まれるという事件が発生した。
下着泥棒ではあるが、父のブリーフが色濃く絡むが故に、野放しも嫌であるが、捕まえるのも何だか嫌だという「なるべく触れたくないが、放っておくには不穏が過ぎる」という祟り神の一種の様な存在と化した。
しかし、いつ標的が父のブリーフから真っ当な下着に移るかも分からぬ為、一件を警察に投げ、付近の巡回が強化された。
父のブリーフの残機はあと7枚である。
ある昼下がり、自宅で散髪に挑みトランクス姿で、ひっくり返った傘のような散髪用の銀のケープ装着したところ、エリマキトカゲの怪人のような佇まいとなった。
そのうえ、このタイミングで私の過去の悪事がバレ、母に説教されるという視覚的に見苦しい事態となった。
ふと、母は正座する私の後方で、窓の外で野良猫が激しく舞っている姿を目にした。

不審な猫の介入により、説教は中断された。
私は窓を開け、猫に落とされたブリーフ拾ったところ、横を見ると猫が父のブリーフを咥え、こちらを見ていた。
父のブリーフが猫に誘拐されんとしている。
猫に返して頂けるよう交渉しようとしたところ、猫は小走りで逃走を果たした。
猫は颯爽と向かいの家の庭へと姿を消した。
その間こちらでは、民家の茂みからガサリと音を立て現れたブリーフを大量に持つ怪人と、巡回中の警官との出会いが生じていた。
明らかに犯行後の佇まいであった。
しかも、ブリーフ泥棒というだけでも重罪であるのに、この佇まいから「頭の狂った」という枕詞が付属される事態である。
どこに出しても満場一致の頭の狂ったブリーフ泥棒がこの地に降り立った。
私の脳裏で、冤罪という二文字が、父のブリーフと共にはためいている。
父のブリーフの残機はあと6枚である。
しかし、警官の動体視力が、先のブリーフを咥えた猫を捕えていれば、この事態の説明に説得力が出る事が予測された。
僅かな希望にかけ「猫が父のパンツを……」と、口を開いたが、この佇まいのまま警官と共に我が家の門を叩き、両親に「本当にコイツはそちらの一族の者か」と確認される未来が待ち受けているかと思うと、恐怖から言葉が詰まった。
その結果「猫」が発音できず
「ぬぽ………っ」
と、奇怪な鳴き声を警官に発する事となった。
もはや人間がどうかも怪しい。
ブリーフ好きの怪物感が漂っている。
もし、ブリーフの神がおわすのならば、父のブリーフを捧げる代わりに、今この瞬間だけでも私に社会的信頼を与えて頂けぬだろうか。
そして、願わくば警官との同行帰宅の回避を望む。
私は己の身の潔白を証明する事に全力を注いだ。
その結果
「どうぞ、これが父のブリーフです」
と、土地の名産品の要領で父のブリーフを差し出す悲しきモンスターとなった。
その後、母はベランダから出ていった奇怪な格好の我が子が、ブリーフと警官と共に玄関から再び現れるという体験をした。
説教が二倍となった。
【追記】
連行中に気が付かぬうちに落としたのか、父のブリーフの残機が5枚となっていた。
すると、インターホンが押され、出ると警官がブリーフを持っていた。
届けてくれたようであった。
しかし、知らぬオヤジのブリーフを運ぶなどと、拾う際に心の葛藤があったに違いない。
少しでも気持ち軽くするべく、オヤジのブリーフではあるものの、洗濯したてのブリーフであると伝えたが
「綺麗な方のブリーフなんで」
と、いう物言いになった。
二分の一の確率で汚いパンツであったかのような可能性を示唆してしまった。
恩を仇で返すタイプである。
【本を出してます!!】
ブリーフ怪人と化した私ではありますが、実は本を出しております。このような奇怪な文章の詰め合わせです。
覗いてみてくださるとブリーフが浮かばれます!!
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コメント
コメント一覧 (2)
やーこさんは何故こんなにも面白アクシデントに巻き込まれるのだろうか
yalalalalalala
が
しました
yalalalalalala
が
しました