風というものは季節の草木の香り、花びら、夕暮れの涼しさ、と様々なものを運ぶが、ブリーフが運ばれたのは初めてであった。

連日に渡り、近所の猫に盗まれていた父のブリーフが強風により我が家に舞い戻ってきた。
何故この地域の風は冒頭に記したような美しいものではなく、人類にとって最も身近で不穏な布を運んできたのだろうか。

とはいえ、他人のブリーフである事も懸念され、庭木に掛かったブリーフを父と私は遠巻きに見つめていたが、母の長年により培われた千里眼により
「これは父のブリーフで間違いない」
という恐怖の鑑定結果が下された。
父はもう履く気はない。
しかし、このまま庭木にブリーフを咲かせておけば
「やーこさん家は奇抜なブリーフの干し方をするのね」
と、ご近所に囁かれる未来が訪れる。
約一週間の放浪の末に舞い戻った行き場を無くしたブリーフの活用法があれば御教示願いたい。

そろそろブリーフ問題から解放されたい一心である。
強風が吹くたびに父のブリーフが我が家に舞い戻るなどという事態となれば、父は風に怯える民となる。
そもそも、猫によってばら撒かれた父のブリーフがこの地に眠っているという事実だけでも恐怖そのものである。
どうか、延々に安らかに土中深くでお眠り頂きたい。
そして、道でブリーフを見つけても我が家の連想はお控え頂きたい。
間違ってもDMに
「やーこさんのお父様のパンツですかね？」
と、写真付きで送ってはならない。
虚を突かれ電車内で美女の面前で咽せかえった責任を取って頂きたい。
美女と私との間に広がる「月とスッポン」程の差が、「月と掃き溜め」の差へと拡張されたこの責任は如何様にして取って頂けるのだろうか。

因みに、我が家の鑑定士による慎重な写真鑑定によると
「これは父のブリーフではない」
との事であった。
そもそも、土地が違いすぎる。
父のブリーフが海をも超えたとなれば、それこそ怪奇現象以外の何者でもない。
荒ぶる付喪神である。

写真など撮っている場合ではない、ブリーフを捕獲した後、早急な供養が必要とされる。
兎にも角にも、私はあの電車内で、見知らぬオヤジのブリーフを送られ、見知らぬオヤジのブリーフで咽せた、見知らぬ怪しい者となった。

皆様のもとに、身元不明のブリーフが舞い降りぬ事を願う。


【追記】
前回の記事
https://yalalalalalala.livedoor.blog/archives/24802720.html

の、続きである。
今回は珍しくエッセイらしいエッセイであったのではないだろうか。
（なにせ途中までは日記からほぼそのまま抜粋している）

そして、この記事については野生のブリーフをDMで送ってくれた方に許可を得て書いている。
（諸々濁してはある）

ブリーフであるからと、安心する事なかれ。
人間の手によりブリーフが盗まれたという案件も多々存在している。
我が家は愛らしき野良猫の仕業であったので、父も
「譲る！」
と、申していたが、どちらかといえば、ブリーフを譲られた猫の方が若干心配である。
そして、各地に散らばる父のブリーフが、間違えても災いを招かぬ事を切に願う。

因みにXの方では、一気に一つのツイートに画像4枚を貼らず、試しに「ツリーに繋げる」という手法を今更ながらに試してみる事にした。

「出来れば末長く本になって頂きたい、その為には少しでも人目に触れなければならぬのではないか」という願望の結果であるが、よく考えれば何も父のブリーフの後日談でやらなくても良かったのではないかと思っている。
これでは、上がるものも上がらぬのではないだろうか。

美しい内容の時にとも思ったが、そもそも美しい内容の時が未だかつて無いという現実が唐突に私に襲いかかってきた。

読み返せば、「尻と変質者と私」ばかりの内容である。
「部屋とワイシャツと私」に似た語呂の良さであるが、リズムこそ似ていれど、大変澱んでいる事がお分かり頂けただろうか。
そして、圧倒的オヤジの出現率である。

Xの方で読みづらかったら大変申し訳ない。
恐らく人目に付く率はあまり変わりないと思うが、この実験と私の悪あがきに少々お付き合い頂けると、幸いである。
しかし、見られるも一興、見られぬも一興である。


お詫びと言っては何であるが、しばしば私の秘蔵の愛猫写真をXの方では貼らせて頂く予定である。
私の尻拭いを愛猫達にさせるというのは少々気が引けるが、念入りなブラシや美味しいカリカリなどで双方の同意を得た。

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【書籍】
尻と変質者と私が凝縮された本である。
ほぼほぼオヤジが出てくる。
猫もちょいちょい出てくる。

○二冊目（NEW）
【電車で不思議なことによく遭遇して、みんな小刻みに震えました】
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○一冊目
【猫の診察で思いがけないすれ違いの末、みんな小刻みに震えました】
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