夕暮れ時の薄暗さが、草木や紫陽花に影を落とし色深く染めていた。
ふと、空を見上げると、並ぶ家々の窓が鮮やかな朱色の空を映している。
夏の始まりの美しさに思わず目を惹かれていると窓が開き、美しい空と引き換えに上裸の湿ったオヤジが現れた。
目が合ってしまった。
オヤジは狼狽えた様子でこちらを見つめたまま、自身の左手で左の胸を、右手で右の胸を、そっと隠した。
生肌のオヤジの破壊力は凄まじく、通りかかった自転車のサラリーマンはブレーキ音を響かせながら危うく自転車ごと紫陽花へと躍り込むところであった。
そろそろ、夏が来る。
皆様はこの夏、如何お過ごしの予定であろうか。
【追記】
夏の始まりがしっとりしたオヤジでかき消された。
しかも、顔見知りのオヤジであった。
普段からはだけているようなオヤジであるが
「シャワー後は恥ずかしい」
との事であった。
サッと湯通しされた後は、お肌も心もデリケートになるらしい。
危うく善良な市民が一人紫陽花畑に突っ込むところであったので、湯浴み後の窓の全開放は少々気をつけた方が良いかもしれない。
しかし、風呂上がりに窓を開け飲むビールは確かに美味い。
【書籍】
オヤジの慎ましやかさに夏の始まりを感じながらも、しっとりと本を出してます。
○二冊目(NEW)
【電車で不思議なことによく遭遇して、みんな小刻みに震えました】
○一冊目
【猫の診察で思いがけないすれ違いの末、みんな小刻みに震えました】
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