気がついたら怪しいセミナーに参加していた。
机に座ると、謎の石のようなものが一人一つずつ配られた。
有難いお方の話を聞き流していると、
「皆さんにお渡しした石を耳をつけてみてください。」
と、何か実技に入っていた。
「これは波動の石です。
集中して、石と対話するつもりで耳を傾ければ波動の音聴こえます。
人によって違いますが、皆さんはどのように聴こえますか?」
と、言われたので集中し、耳を傾けたところ
「お尻を出した子、一等賞」
と、爆音で流れた。
私の波動の石の様子がおかしい。
隣にいた大学生は波動の石を落とした。
日本むかしばなしのエンディング曲であった。
手提げの中のタブレットが、ずっとロード中になっていたところを再生されてしまったようであった。
「イイナ、イイナ
ニンゲン テ イイナ」
という、石から言われたら身体を乗っ取られそうな不安が過ぎる歌詞を経由した後、手提げに手を入れ何食わぬ顔でタブレットを連打し停止させた。
会場は静まり返った。
恐らく殆どの者が、波動の音ではなく
「お尻を出した子、一等賞」
しか聴こえていない。
大変気まずい中、一人の参加者が手を上げ
「小さく滝のような音がしました…」
と、述べた。
恐らく体験者に紛れ込んだこの会の者である。
有難いお方は、私の波動の石のバグについては無かった事にし、会の進行を進めた。
「では、宇宙を意識して、エネルギーを送ってみてください。
音が少し聴き取りやすくなるはずです」
と、皆にも石に手をかざすように申した。
―—私も手をかざし集中した。
「楽天モバアアアアァァァイッ!!!!」
—―私の波動の石がシャウトした。
動画が広告に入ったのだ。
私はYouTubeのシステムを恨んだ。
このままだと、日本のスマホ代について波動の石が文句を言い始めるので、私は再び手提げに手を入れ必死に止めた。
有難いお方の顔が引き攣っている。
隣の大学生は下を向き震えていた。
もはや石どころではない。
しかし、無理やり進行を進めようしたのか、
「何が聴こえましたか?」
と、有難いお方が最前列にいた無害そうなジジイに問いかけた。
ジジイは
「耳が悪くて、さっきから何て言ってるか分からん」
と、申した。
今まで最前列で何を聞いていたのだろうか。
大学生はジジイにトドメを刺され、その後は顔を上げる事はなかった。
歓談の時間が設けられた。
有難いお方が
「用事のある方は、本日はここまでで大丈夫ですよ」
と、言いながら私を見た。
しかし、特に用事もなかったので暫くいた。
大半の者は帰り、残った者はサクラ疑惑の者を除き、私と耳の遠いジジイだけであった。
一番いらないのが残ったなと思った事だろう。
【書籍】
こういったセミナーと私は本当に相性が悪い。
波動は出ませんでしたが、本は出ました。
こんな感じの話の詰め合わせです。
○二冊目(NEW)
【電車で不思議なことによく遭遇して、みんな小刻みに震えました】
コメント
コメント一覧 (4)
と思わせて貰えるので、いつも肩の力が抜けてありがたいでございます。
yalalalalalala
がしました
そのような素晴らしい方にはこの石を・・・
yalalalalalala
がしました
今回も面白かったです
過去作読んでまた新作待ちます
yalalalalalala
がしました
おめでとうございます。
yalalalalalala
がしました