井筒という男子生徒のコートが校門の車輪に巻き込まれ門が動かなくなった。

動けぬ本人の代わりに職員室へ井筒が挟まった事を告げに行ったが、疲れた教師たちの耳に対し

「肛門に異物が挟まりました」

という、とんでもない発言となった。

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職員室に戦慄が走った。
その場にいた3人の教員達は息を飲んだ。
絞り出された教員の第一声は
「誰の?」
で、あった。
私は井筒の名を呼び捨てにしたのが良くなかったのかと思い
「井筒君ですけど」
と、丁寧に「君」を付けて名を出した為に、井筒の肛門に悲劇が訪れた。

この時に限って聞き取りやすく発音された事が、井筒の不幸の始まりである。
私の滑舌は遂に極悪を極めた。

「校門に」と最初に言っているのに、教員達に「どこで?」と場所を尋ねられた時に気がつくべきであった。
井筒本人は今は校庭にいると伝えると、体育教師が「大変だ!」と、言い走りだした。

他の教員に井筒は自分で動けそうかと訊かれたので窓に視線を移すと、既に校門を動かすことを諦め、コートを脱ぎ自由の身を手に入れて走り回る井筒の姿が見えた。

「肛門の方はもうダメそうですね……」

と申した為、教師達の中で井筒は己の尻と決別を果たした。

井筒と肛門が別々の道を歩きはじめてしまった。
もともと何かがおかしいと思っていた担任が
「もしかして……校門……?」
と、間違った言葉を検索した際のGoogleの表示ような事を言い出した為、事態は変化した。

その頃、走り疲れた井筒は再び校門に佇んでいたが
「尻は大丈夫か!?」
と、凄まじい剣幕で駆け寄る体育教師に恐怖していた。
怒られると思い、全力で逃げ出した結果
「おまえ!!動いちゃダメだ!!」
「尻がどうなってもいいのか!?」
などと、井筒は尻を人質に脅されるという奇抜な体験をしていた。

我々は井筒の肛門の為に、その後叱られた。

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【追記】
塾へ行くのが遅れ、男性塾講師に叱られた。
井筒の肛門事件が尾を引き、私の私生活にまで影響を及ぼした。
しかし、遅れた理由を話したところ、塾講師は「んっふふん」と妙な息遣いをし、説教は有耶無耶となった。
思ったよりも叱られなくて良かったと胸を撫でおろしたが、ツボに入った他の男子生徒が叱られた。
講義終了後、その男子生徒から苦情が入った。


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