電車でボックス席に座っていると、対面の席に座るオヤジがウィンクしてきた。
随分愛想の良いオヤジだなと思い、ウィンクを返すと、今度は手を振ってきたので、こちらも手でハートを型取り応戦した。
私のハートに被弾した事によって咽せたオヤジの目からコンタクトレンズが落下した。
オヤジはこちらにウィンクしていたのではなく、コンタクトのずれを目の筋力のみで直していたようであった。
冷静に思い返せば、オヤジが手を振っていたのも恐らくは挨拶の類いなどではなく、「違う」という意思表示である。
どおりで必死な顔をしていると思った。
私のせいでウィンクやハートを送られ続ける不幸なオヤジが車両内に誕生していた。
私の隣に座っていたサラリーマンが
「…助けて…」
と、肩を震わせながら小さく呟いた。
助けなど来ない。
【追記】
オヤジも私も窓側であり、逃げ場はなかった。
オヤジの隣では巨大なジジイが爆睡しており、私の隣のサラリーマンは既にダメそうである。
普通電車のボックス席という妙に近い距離感が我々を追い詰めた。
肩を振るわせるサラリーマンとコンタクトのオヤジがようやく落ち着いてきた頃、ふと爆睡するジジイが
「何でそこで椎茸を混ぜる……!」
と、寝言を呟いた。
一体何に椎茸を混入されたのだろうか。
再びオヤジとサラリーマンは耐久戦に入った。
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yalalalalalala
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