むめいさん×やーこコラボ

【四十九日】

爺さんの四十九日で寺に出向いたが、近隣の小学校が運動会であった為に、銃声と共に住職の経読が開始された。

「今スタートしました」
運動会の実況放送が奇しくも爺さんの四十九日の実況を担っている。
更に徒競走の定番曲クシコス・ポストと住職の木魚がセッションを果たし、私の集中力は爺さんの四十九日から引き剥がされた。

人生でこの二つを同時に聴く事があるとは思わなかった。
寺に入る際に渡された経が書いてある本の存在を思い出し、私は爺さんの四十九日に集中する為、唱える事にした。


外の音が気にならぬようになった気がする。
良かったと安堵し、私は経の効力に思いを馳せた。
しかし、次の瞬間、マツケンサンバが流れ始めた。                


クソ、マツケンサンバに心を持っていかれる。

寺の窓が全開であった事が不幸の始まりである。
生きた乳酸菌ですら腸に届くのは僅かだというのに、マツケンサンバは容赦なく鼓膜に届いた。
銃声とマツケンサンバに包まれるファンキーな状況下で、爺さんに極楽浄土へ行けるかの否かの重要な判決が下されようとしている。

サンバのリズムに脇汗が大量に流れた。
一見すれば私に経が効き、苦しんでいるようにも見えるが、全ては運動会と四十九日のマリアージュが要因である。
四十九日ガチ勢に怒られそうであるが、気が散り過ぎて心身共に疲労を極めた。
法事がこんなにも精神力と脇の水分が消耗されるものであるとは思わなかった。
                  
最後に住職から、有難い話があり
「魂とは……」
と、住職が魂について語り始めた。
その瞬間、平原綾香のジュピターが流れ始めた。

住職の背にコスモを感じる。

壮大な音楽と魂の物語に、銃声で始まった爺さんの四十九日は感動のスペクタルを迎えた。

音楽の力の偉大さを知った。

【追記】
コラボにて描かせて頂いた二作目である。
本来は一つであったが、漫画が面白すぎて筆が進み、最終的に選べなくなり二つ提出したところ、ご厚意でどちらも掲載許可を頂けた。

コラボに携わって頂いた方々は奇怪な文章を二度も読まされるはめになった事と思われるが、快くご対応して頂けて涙がちょちょぎれる思いであった。

是非漫画で読んで頂きたい。
この破壊力を体感して頂きたい。


むめいさん(@mumei10101 )


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