公園を通りかかると小さい子が一人でおり、近くで酒を飲んでいるいつものオヤジ達が狼狽えていた。

迷子だと心配したジジイがオヤジを向かわせようとけしかけた。
「お前、行け。迷子かもしれないだろ」
「え、おれ?子供泣かないかなぁ」
「お前見た目がサンタさんみたいだし大丈夫だろ」
「でもサンタさん3日間風呂入ってない」
「汚ねぇなぁお前」
という不毛な会話が生じていた。

声を掛けると「お前が行ってやってくれ」と言われたが、私は鼻血が出ておりTシャツも血だらけあったので「やっぱダメだ」と、ジジイ諦めた。
「なんで鼻血垂らしてんだよ。拭けよ」
と、言われ拭いた。
血の跡が横に伸びた。

「ジジイが行けば良い」と提案するとオヤジが
「こんな生ミイラみたいのか行ったら泣くんじゃねぇか?」
と、危惧した。
生ミイラ、汚いサンタ、鼻血不審者いう、不気味なトリオが結成された。 
消去法で決めるしかないと、ジジイがよく選挙の日が言う言葉を呟いた。

私はピカチュウの面を持っていたので、これで顔を隠せばどうだろうかと尋ねた。
しかし、Tシャツが血だらけの為、浦沢直樹の漫画に出てきそうな殺人鬼感が漂った。

清潔感で選ぶ事となった。
選ばれたのはジジイであった。
朝風呂後で一番クリーンであった。
しかし、面を付けると微弱な静電気程しか放てなそうなピカチュウとなった。
潤いがたりない。
汚いサンタが呟いた。

とりあえず、いつもの警官が近所を巡回しているだろうと私は警官を探しに行った。
その間、汚いサンタと生ミイラは子供を生温かく見守る事となった。

警官は見当たらなかったが、警官に連絡している半泣きのラグビー部が見つかった。
甥っ子と遊んでいたらはぐれてしまったと、明らかにあの子の親族であった。
ラグビー部を連れて行くとピカチュウの面を頭につけた生ミイラと汚いサンタに子供が囲まれていた。

明らかに事案であった。
危うくラグビー部にタックルされミイラとサンタクロースが宙を舞うところであった。

IMG_1413


【追記】
その後、いつもの警官が現れたが、後に
「こんなに見てくれが怪しい者しかいないのも珍しい」
と、語った。

因みに私の鼻血はくしゃみをした拍子に撒き散らされたものである。
ティッシュで拭った後も、まさか横に伸びているとは知らず、何故教えてくれなかったのかと、生ミイラと汚いサンタを恨んだ。

ラグビー部の電話を盗み聞きし、確信を得てから声をかけたが、ラグビー部はいきなり顔に血が伸びてる者に話しかけられ驚いた顔をしていた。
鼻血が出た際は、拭き終わった後に顔面の確認をする事が必要である。


【書籍】
猫達との奇怪な話詰め合わせの本
「尻でカスタネットを奏でたら視線が刺さり震えたが今日も猫は愛おしい」
現在、予約受付中です!

11月29日に発売予定です!!

【Amazon限定特典本】
  受付中!!

  •初回版の場合はしおり
  •壁紙2種類(2025年 3月まで)


【こちらは一冊目と二冊目です!】

○二冊目(NEW)
【電車で不思議なことによく遭遇して、みんな小刻みに震えました】

電車で不思議なことによく遭遇して、みんな小刻みに震えました
電車で不思議なことによく遭遇して、みんな小刻みに震えました
やーこ
KADOKAWA
2024-04-24


○一冊目
猫の診察で思いがけないすれ違いの末、みんな小刻みに震えました】



こちらで各ネット書店でもお求めいただけます!
https://www.kadokawa.co.jp/product/322312000832/