【迷惑なオヤジ】

綿毛が殆ど飛ばされたたんぽぽのような頭を撫でとかし、オヤジは今日も外へ出る。

道に転がっている空き缶を手当たり次第に蹴り飛ばすので近隣住民が怯える。
公園のベンチに座りワンカップを開ける。
「あーーーー」
と、喉に熱を帯びるアルコールを豪快に発声と共に散らす。
近くにいた主婦達もその場から散らす。

猫の餌を横取りし、それを咎める人に対して屁で応戦する。
赤信号をわざとゆっくりと歩き、車を威嚇。
その帰り道、先程餌を横取りした猫の返り討ちにあう。

オヤジは近所で警戒されている。
しかし、そんな事はオヤジとって知った事ではない。



【ヒーロー】

学校へ行かなくなった僕は、公園へ行く。

ゴミ一つない道を白い杖を打ち付けながらお爺さんが歩いている。
公園のベンチに座り、本を読むと近所のオバさん達がこっちを見て小声で話始める。
耳障りな言葉を聞いたが、いつも公園で酒を飲んでいるオヤジが酒を豪快に飲み雄叫びを上げると、一瞬にしていなくなった。

公園に住む猫の前に置かれた、魚の煮つけをオヤジが取り上げた。何するんだと文句を言う人は屁で追い払った。
横断歩道を渡りきれなかったおばあさんの少し前を、オヤジはゆっくりと歩く。
猫の前にコンビニで買ってきた猫用の餌を置く。
しかし、煮付けの恨みからか激しい猫パンチにあっている。

僕はオヤジみたいな人がヒーローだと思う。
そう思っている事をオヤジは知らない。


【追記】
道を歩いたり、電車に乗っていると、見えないところで誰かの助けになる行動をしている人をよく目にする。
誰に褒められる為でもなく、自分が気になったから動いてくれる人達である。

助けようとした結果、嫌な目に合う事もあるであろうが、その心意気を私は尊敬せずにはいられない。

その行動が見ている者たちの気持ちも晴れやかにしてくれている事を、陰ながらお伝えしたい所存である。

しかし、実際に私が声をかければ
「君……いいねぇ……」
などと、ニチャリと笑みを浮かべながら話しかける変態が誕生するだけなので、声をかける事はできない。
せめて文章では表現させて頂いた。

優しき人達に幸あれ。



【書籍】
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