【学校に行けない私の話】
私は学校へ行く事をやめた。
そんな私の部屋の前で、今日も兄は私に向かい悪口を言う。
しかし、その悪口が
「屁を凝縮したような声だ」
「正直尻の方がまだ生産性のある人生だ」
と、妙に独特である。
よくもまあ、こんなにも癖の強い悪口の引き出しがあるものだと、関心すら抱きそうになった。昭和の真面目な学生を現代に具現化したような兄の口から発せられているというところが、更に怪奇さを加速させている。
そして、最後に兄はいつも呟く。
「そんな奴にお前が嫌がらせをされたのは、お前がそいつと正反対の良い奴だからだ。俺はお前を誇りに思う」
学校に行けなくなった私の部屋の前で、真面目一筋の不器用な兄は、今日も慣れない悪口を言う。
【悪口を言う兄の話】
最初はドアの前で妹を励ましていた。
しかし、如何なる励ましの言葉も、妹の耳には一切届かなかった。
俺は心底、妹を追い詰めたその女が憎い。
俺はヤケになった。
そして、会ったこともないのに、妹の部屋の前で滅茶苦茶にその女の悪口言った。
すると、中から妹が吹き出したような声が聞こえた。
妹のそんな声を聞いたのは久々であった。
それから俺は自身の勉学に加え、悪口の研究を重ねた。
今日も悪口を書き連ねたノートを持ち、妹の部屋の前へ朗読しに向かった。
しかし、書き連ねた罵詈雑言は俺の口から発せられる事はなかった。
代わりに涙が出た。
兄としてあるまじきところを妹に見られてしまった。
しかし、悪い気はしなかった。
【妹の手記】
真面目な兄に悪口を言わせてしまうなんて、私はなんて駄目な人間なのだろうと、あの時の精神状態で思わなかったのは、ひとえに兄の悪口が独特であったからだろう。
祖父譲りの古臭い口調も相まり、悪口としての出来は最悪で、もし私に嫌がらせをしていたクラスメイト本人が聞いたとしても、ダメージは皆無であるに違いない。
兄の悪口のお陰で、私の中で
「嫌がらせしてきたクラスメイト=屁の人」
という構図が出来上がった。
兄は、そんな私の話を聞くと
「お前が精神的に疲弊しきる前に、自ら逃げる事を選んだ事が良かったのだ」
と、語った。
当時は、みんなが通っている学校に行けなくなった自分は精神が弱いと、周りも思っていると思っていた。
でも、今となっては兄の下手な悪口に笑える気力があるうちにあの環境から離れられたのは良かったと思っている。
兄はボイスレコーダーを渡し、「上手くいくかは分からぬが、証拠を集めて「屁の人」を倒すのも良し、このまま離れるも良し、でもどんな形であれ学ぶ姿勢だけは忘れるな」と、私に釘を刺した。
屁の人というのが何だか気になったが、最後の方は祖父の受け入りそのままの言葉だった。
【追記】
この話は創作で、私の話ではないです。
私には怖い姉しかいません。
心配してくれた方、有難う御座います。
心配すべきは恐怖の姉の存在です。
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やーこ
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2024-04-24


コメント
コメント一覧 (2)
yalalalalalala
が
しました
私は恐怖の姉の方の立場の人間なので、どんまいがんばれ!とだけ書き置いて去ります。
yalalalalalala
が
しました