よくインド人に間違えられる友人のオポポイと共に電車に乗っていると、女性が酒に酔ったオヤジに絡まれていた。

迷惑そうであったのでオポポイと策を練り
「まずは親しげに近寄り、私が女性の知人を装い声をかける。オヤジが逆上したら、オポポイは外国人に擬態し事態を撹乱してくれ」
と事を決め、我々は意を決し歩みを進めた。

しかし、こちらの「女性に親しげに近づという理想とは裏腹に、現実では女性とオヤジの眼前に不自然な笑みを浮かべ徐々に近づいてくる中国人とインド人が現れた。

私が中国武術の練習着を着ていたばかりに国籍が渋滞した。
しかも声を掛ける際に、初対面の女人に緊張し目を逸らしてしまった結果
「ひさしぶり」
などと、何故かオヤジに向かい知人のフリをする事となった。


オヤジから女性を守るつもりが、いつの間にか女性からオヤジを守ろうとしといる。

そのうえ「実は待ち合わせをしており、探していた」というシナリオが私の中で暴走し
「あなたのような人を探していた」
と、オヤジに対しアイドルの原石を見つけたかのような発言まで放たれた。

オヤジの原石を発掘してしまった。
これからのオヤジの人生に歌やダンスのレッスンが課せられる不安を与えている。
全てを誤魔化すべく、私はオポポイの外国人のふりで事態を煙に巻こうと考え、目で合図を送った。
オポポイは神妙に頷き、口を開いた。

「アップル」

私の中の「外国人のふり」という概念を逸脱した。



何故「Apple」をチョイスしたのか理解に苦しむ。
昼下がりのゴリラの頭の中のでも受信したのだろうか。
しかも、明らかに日本語の発音の「あっぷる」であり、ネイティブさは皆無であった。
私はオポポイによる援護射撃について諦めた。

我々が国籍と自己を見失いつつある中、オヤジは酔いから自分を取り戻しつつあった。
「あの……いきなり何なんですか……」
酔っ払いのくせに、現時点ではこの中で一番至極真っ当なことを言っている。
オポポイは起死回生を目論み口を挟んだ。

「ヒァ ウィー ゴー」

オヤジを何処へ連れて行く気なのだろうか。

場は荒れる一方である。
オヤジは黙り、何かを深く考え込んでいるようであった。
恐らく、眼前の半笑いの中国人とインド人が自分の人生に登場していたか否かを確認するべく記憶を辿っているのだろう。

「ナイスチューミーチュー」
黙れアップル。

オポポイはとりあえず知っている英語を発するインド製のマシーンと化した。

二駅程過ぎると、女性は電車を降りていった。
車両にはオヤジと私とオポポイだけが残された。


【付け足し】
暫しの無言の中、オポポイが口を開いた。
「俺たちだけになったね……」
オヤジがビクリと身を震わせた。
さっきまで「アップル」などと言っていた者が急に流暢に喋り出した事への後遺症からくるものである。
しかも発言が密室で囁かれたら恐怖そのものであった為、オヤジには私という存在に感謝して欲しい。

IMG_2025

【追記】
年末に向けると、電車で他人に絡む者を非常によく見かける。
楽しく会話ならば問題はないが、気乗りしない相手に対し絡むのはよくないと、私は普段より警鐘を鳴らしている。

しかし、よく考えれば、この時オヤジが美女に絡んでいたように、我々もオヤジと美女に絡んでいたのではないだろうか。

水面を覗けば自分の姿が映るかのように、オヤジも我々も自分の行いの反射を目にしていたのではないだろうか。

重めの一石を投じ水面を大いに揺らし掻き消したい気分である。

因みに、前にも書いたがオポポイの名の由来は
「Apple」を「opopol」と、書いた事による。


【書籍】

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オポポイも少し出ます!!

猫エッセイ
「尻でカスタネットを奏でたら視線が刺さり震えたが今日も猫は愛おしい」


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○二冊目
【電車で不思議なことによく遭遇して、みんな小刻みに震えました】

電車で不思議なことによく遭遇して、みんな小刻みに震えました
電車で不思議なことによく遭遇して、みんな小刻みに震えました
やーこ
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2024-04-24

○一冊目
猫の診察で思いがけないすれ違いの末、みんな小刻みに震えました】




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