住宅地に爆音で音楽を流す車が停まったが、近くに住む耳が遠いジジイの演歌タイムと重なり、ジジイの家からも爆音で吉幾三が流れ始めた。
時を同じくして常に窓を全開でピアノを弾く家も加わり、激しく「魔王」が弾き鳴らされた。隣家の元音楽教師の凄まじく歌の上手い認知症の老婆も触発されたのか歌い始め、更にはトドメと言わんばかりに市役所による行方不明者の放送まで流れた。
吉幾三と魔王と行方不明者が私の鼓膜で殴り合っている。
爆音の車はそっと窓を閉めた。
すると、いつも付近を徘徊している不審なジジイが車の周辺をうろつき始め、運転席の窓に手を付き顔を近づけた。
「おれぇ!この歌!知ってるよぉ!
ア゛ァアーーーーーーー!!」
と大声を発した後、掠りもしない歌を歌い始めた。
ゾンビ映画の一幕のようであった。
あれから、あの車は見ない。

【追記】
毎日ではないが、うるせぇ地域である。
ちなみに、一時期ゲーム実況者らしき者が住んでいたのか、夜になると
「おおおおい!ちょっと待ってよこれぇー!」
というような声が響いていたが、先の不審なジジイが
「うおおおおおーーーーー!」
と、共鳴し始め、近所の柴犬シロ丸も遠吠えをするようになったあたりで、実況の声は止んだ。
意外にも不審なジジイのおかげで治安は守られているように感じる。
認知症の老婆のご家族は、我々が引っ越しの挨拶をしに行った際に
「うちはご迷惑をおかけしてしまうと思います……」
と、すまなそうにしていたが、老婆の歌が上手すぎる為に全く苦にならない。
むしろ、爆音の中の一輪のオアシスである。
そして、嵐の日に響く老婆の歌声は大変圧巻であった。
私は彼女の歌声が好きである。
あと、シロ丸は可愛い。
【書籍】
そんな地域に住む、私と愛猫達、野良猫達の話を書いた猫本が出ました。
◯猫エッセイ
「尻でカスタネットを奏でたら視線が刺さり震えたが今日も猫は愛おしい」
【↑Amazon限定特典本】
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(※しおりのみ、書店に置かれている本でも初回版ならば付いてきます!!)
【こちらは一冊目と二冊目です!】
○二冊目
【電車で不思議なことによく遭遇して、みんな小刻みに震えました】

電車で不思議なことによく遭遇して、みんな小刻みに震えました
やーこ
KADOKAWA
2024-04-24


コメント
コメント一覧 (1)
人間に必要なのはスルースキルだと改めて思いました
yalalalalalala
が
しました