子供に人気のキャラクターで危ない目にあった話


私は児童館のスタッフとして働き、日々子供達に昆虫でも観察するような眼差しで見つめられていた。

ある日、反抗的な中学生が職員に
「連帯感がない」
と叱られているなか、私は勤務が終了したので来館した子供と絵を描いて遊んでいた。

その際、「スヌーピーを知らない」と言うので、絶対に見たら分かるはずだと私はスヌーピーを見せた。







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私の画力が足りず、スヌーピーに深刻な事故が起きた。


人里に下りてきたら恐らく退治される。
シンプルに見えるキャラクターこそ顔のバランスが難しいという事を私はこの時知った。
しかも、「スヌーピー」を若干噛み
「スクーディーです」
などと申してしまい、私は子供の脳を混乱させた。

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背後の中学生と職員の声が震え始めた。

世界的に愛されているキャラを描いたはずであるのに、何故か私の紙の上では素性の掴めぬ生き物がこちらを凝視している。

しかし、おおよその特徴は捉えられてはいるので、足りぬ画力は情報で補うべしと私はスヌーピーについて語った。
ところがよく考えれば、子供の頃にアニメを見かける度に同じ話であり、私の記憶の中のスヌーピーは常に地上波で家出を繰り返していた。

よって情報が少なく
『屋根の上で昼寝をし、家出を繰り返し、木製バットを持って徘徊する』
というスクーディーさんの荒れた私生活が露わとなった。

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「すみません……気が散るので、他所でやってください……僕がクビにされます……」
と、何故か職員が追い詰められ始めた。
児童館でスヌーピーを描いて職を失うかも知れぬ危機的状況に陥る者が現れようとは思わなかった。叱られている中学生が説教とは別の諸事情で泣きそうな顔をしている。

部屋を移動する前に子供が壁に絵を貼りたいというので、子供の描いた絵と共にスクーディーさんを貼った。

ーースクーディーさんを置いていくなーー

中学生と職員の心は一つとなった。
職員に要求されていた連帯感が中学生の中に芽生えた。

そんな心の叫びも、中学生の成長も、私は見逃し、子供と共にその場を去った後もスクーディーさんだけは中学生と職員を熟視し続けていた。


【追記】
イラストのスクーディーさんは、再現して描いたものである。
2回目ともなれば画力が少なからず上がるので、当日描いたものより上手くなっている。

これより記すのは、当時の私の日記である。

5/1
スクーディーさんの隣に、色違いのピンクのスクーディーさんが貼り付けられていた。

目を離した隙にスクーディーさんに嫁ができていた。
恋人すらおらぬ私はスクーディーさんに人生の遅れを取った。

5/4
スクーディーさんの嫁がいなくなった。
出ていかれたのだろうか。
心なしかスクーディーさんの瞳が悲しげに見えた。

5/7
スクーディーさんの隣に嫁の姿があった。
ヨリを戻したようであった。
スクーディーさんの人生に追いつけない。


【書籍】
三冊目に猫エッセイ(?)が、出ました。
猫も出ますが、不審者も出ます。
なんなら猫も不穏です。

◯最新作 猫エッセイ
「尻でカスタネットを奏でたら視線が刺さり震えたが今日も猫は愛おしい」
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◯一冊目
【猫の診察で思いがけないすれ違いの末、みんな小刻みに震えました】

猫の病院で起きたすれ違い、
カツアゲにあった話など、日常の不審者詰め合わせ。
愛猫の話もあり。

◯二冊目
【電車で不思議なことによく遭遇して、みんな小刻みに震えました】

変質者と変質者のマリアージュ
勿論電車の中での話以外もあります。
愛猫の話もあり。

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