アルバイト先の個人経営のコンビニで、レジの壁に店長達の顔写真を貼り出る事になったので印刷したところ、コピー機から巨大化した店長が排出された。

用紙サイズを間違えたのだ。
壁に貼り付けたところ、店長のインパクトがデカすぎて中国の偉い人の肖像画ような雰囲気が出た。
先程からレジで期限切れのクーポンが使えぬ事に対しバイトの木村にブチギレていた客の声が一瞬止んだ。


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暫しの沈黙の後、気を取り直した客は再び木村にクーポンについて熱弁し始めた。

木村はピンチであるが、店長の写真は問題がなさそうなので、私は引き続きこの店のオーナーである店長の父(71)の巨大な写真を店長の横に貼った。
店長のサイズに合わせたのだ。
二枚貼れば紹介写真らしくなるかに思われたが、偉人の肖像画が二つに増えただけであった。
再び客は黙った。


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暫しの沈黙の後、客のターゲットが木村から私へと移行された。
「なんで客の俺が話している目の前でそんな物を貼っているんだ」
と、ご質問頂いたので
「オーナーが店外のゴミ箱の回収をしていたら、怪しい老人がゴミを物色していると通報が入った」
と、間違っても肖像画になる事はないエピソードを告げると客は下を向いた。


「今月だけで既に2件くらい入ってます」
と伝えると、事の深刻さが理解されたのか完全に大人しくなった。
写真により思わぬ効果が発揮されている。
横を見ると、客の目線を追って振り向いた為に一族の肖像画を目にした木村も半泣きになっていた。
木村にも効いていた。

苦情を言っていた手前笑う訳にはいかぬ客と、店員として笑う訳にはいかぬ木村が耐えている最中、我々の前を寝癖によりサイドの髪が立ち上がり電撃ネットワークのような髪型になっているオーナーが箒を持って横切り店の前を掃き始めたので、客は完全にトドメを刺されていた。

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【続き】
「気をつけろよ……」
と、蚊の鳴くような声で言葉を残し、客は退店していった。
何に気をつければよいのだろうか。
オーナーの髪型についてだろうか。

1時間後、店長が出勤してきた。
「何の恨みがあって……」
それが、その日の店長の第一声であった。

店長と私の間に
「どうしてこんな事に?」
「サイズを間違えました」
「貼ったことが間違いだよ」
という生産性のない会話が挟まれた後、店長が写真を外そうと手をかけたところ、バランスを崩し店長の父の写真が盛大に破かれた。
圧政から解放された市民による見せしめのようになった。

クーデターが木村のツボに触れたのか、しばらく事務所から出てこなかった。
木村の代わりに電撃ネットワークがレジに入ろうとしたが、店長が止めていた。

その後、何度やっても巨大化した店長が印刷されるので、私はコピー機の使用を禁じられた。

【書籍】
銅鑼を持った不審者も出ましたが、猫エッセイも出ました。

◯最新作 愛猫や近所の不審者と不穏な猫達のエッセイ
「尻でカスタネットを奏でたら視線が刺さり震えたが今日も猫は愛おしい」
•猫に点穴を突かれて病院へ
•店員を襲うあかなめ
•猫と尻カスタネット
などの話が詰まってます。
【↑Amazon限定特典本】 •初回版の場合はしおり ※書店に置かれている本でも、初回版ならば付いてきます!!


◯一冊目 変なエッセイ
【猫の診察で思いがけないすれ違いの末、みんな小刻みに震えました】

猫の病院で起きたすれ違い、
カツアゲにあった話など、日常の不審者詰め合わせ。
愛猫の話もあり。


◯二冊目 変人達のレクイエム
【電車で不思議なことによく遭遇して、みんな小刻みに震えました】

変質者と変質者のマリアージュ
勿論電車の中での話以外もあります。
愛猫の話もあり。


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